○「商店街の活性化」について 長崎県佐世保市
1.商店街をめぐる佐世保市の現状
人口25万人。
産業別人口構成からして、佐世保は造船の町として有名だが、第3次産業
比率が高く、「商業の町」といえる。
観光人口400万人/年。ハウステンボス、九十九島の観光資源を持つ。
国の「エコツーリズム」指定13都市のうちのひとつ。
佐世保市は平地が少ない。国が現在進めている「コンパクトシティ」構想
を先取りした形。このアーケードを通らないと用が済まない。
まっすぐに続く1本のアーケード商店街の形。延長約1キロは全国同規模
の市で最大。そのアーケード周辺にふたつの病院があり、600床、来院1
200人/日を数える。集客に有利な立地といえる。またアーケード周辺に
公共施設もまとまっている。古くからのスーパーも共存している。
商店数については、平成6年を100とした指数で、平成14年、全国平
均値は86.7に対し、佐世保全体では85.0、佐世保中心地では79.
3と、全国に比しても減少割合が高い。これは大型郊外店出店の影響。
商品販売額で比較すると、佐世保市全体では全国値よりも高いのは、郊外
大型店の売り上げと佐世保を本拠地とする通信販売大手「ジャパネット」の
展開が押し上げている。中心地では販売額の推移は全国減少傾向よりも激し
い減少指数を示しているのが実情。
人口の推移を見ると、市全体で微減傾向が続く中、中心地では平成14年
で下げ止まり。これは中心部にマンションが建ったことによる。
通行量調査で見ると、平日に対し休日の通行量が多いのは全国でめずらし
い。これは「元気のある証拠」。
このほか、米軍、自衛隊の経済効果がある。
2.中心市街地地活性化基本計画
H11年3月作成。
市街地の整備改善については行政が、商業等の活性化については商工会議
所中心のTMOが推進を担う。
H13年度TMOへの補助金は22万円。
佐世保市魅力ある商店街創出支援事業
→商工会議所、商工会、商店街協同組合を対象
@イベント事業
→郊外大型店舗出店で危機感。
→継続できるものであるとの条件で、新規イベントに上限50万円の助成。
(事業費の1/3)
→特例として、複数商店街連合型のイベントには別途300万円上限。
具体的な事業
◎H8より「きらきらフェスティバル」・・・百万個のイルミネーション、
アーケード内できらきら大パーティ。
H16の実績
来場者54万人、イベント参加者7万人、総事業費2500万円、市
補助金500万円。
5500人による乾杯。参加者は1人1000円の参加費。主催者で
ビールなど少々準備するが、あとは各自持ち込み。各商店もさまざま
に工夫。パーティは1時間で終わるが、その後ほとんどの人が2次会
としてどこかに流れていく。
工夫として、市民が立会人となる「きらきらウエディング」、市民によ
るクリスマス「第九」、「百人のサンタクロース」など。
このほかにも毎週土日にイベントを開催。
◎H10より「YOSAKOIさせぼ祭り」中心街含む市内13会場。
「きらきら」に続いて何かもうひとつやりたい、との商店街の声。
商店街が開催する「朝食会」で話題が出て、皆で北海道を視察。メン
バーの若手から、「YOSAKOIをやろう」と発案。
H10当初6チームからH17は141チームへと拡大。期間中来場
者20万人。
H16の実績
来場者26万人、踊り子8000人、チーム数134(うち市外101
チーム)、総事業費7千万円、市補助金1千万円
A空き店舗対策事業
◎四ケ町商店街では120店舗中空き店舗は4。
チャレンジショップに22テナントが出店(56坪のスペースを22
区画に分ける)、7店舗が独立開業。
予算区分は国・県800万円、市120万円、商店街200万円、商
工会議所70万円、計1200万円。
出店者の自己負担は月15000円。
◎四ケ町商店街H17実施事業として、「一店逸品推進事業」を展開。
講習会開催、商品研究、広報誌作成、HP掲載、逸品フェア開催など。
◎四ケ町商店街ではH18予定事業として、空きビルを購入、1階をテ
ナント、2階を交流スペース、3階を託児所にする計画。
→いかに人を引き込むか、に苦心している。
◎三ケ町商店街ではH17より、写真展、文化サークル活動に空き店舗
を提供。くつろげる場所、交流スペースづくりを目指す。
この商店街は商店街全体の中で端に位置し、大会社が多い。そのこと
から、くつろげる場所作りを発想した。
Bハード事業
例:アーケード、共同駐車場、休憩施設、公衆便所、防犯カメラ、街路灯、
アーチ、案内板、放送設備、教養文化施設等を対象に1/3補助。
C高度情報化促進事業
例:ホームページ作成、ネットショッピングモール開設等を対象に1/3
補助、上限50万円。
Dその他
例:活性化計画策定事業、活性化研究会・講習会事業などへ1/2補助。
※これらに国・県からの補助金を連動させることもできる場合がある。
※補助制度周知のため、市内25商店街のすべてを、職員が一巡した。
3.感想
佐世保市は昔からの軍港、そして米軍や自衛隊からの多大な経済貢献も見
込まれ、さらにハウステンボス、九十九島を観光資源とする一大観光地です。
そして人口は25万人。これだけ考えても、すぐに丸亀市と比較したり参考
にすることはできないかも知れません。
それでも私たちがこの地を視察先に選んだのは、公明新聞に掲載されたこ
の商店街の記事の中で、商店主が、「確かにYOSAKOIで大騒ぎしても
個々の商店に売り上げはない。けれどもわれわれはこれをやる」といった意
味の意気込みのメッセージが紹介されていたからでした。
実際に佐世保市にお邪魔し、上記のようにこまごまと説明を受けるなか、
平地が少なくてアーケードを中心に人々が生活しているという「地の利」や、
現在の丸亀市の財政状況ではとても、このような潤沢な補助金制度を整備で
きないことなどが詳しくわかってきました。
市役所で説明を受けた後、実際にアーケードの下を歩きました。
私たちは当日の宿を、あえてその中心地に取っておきました。夜もまた、
翌朝もまたこのアーケードの周辺を見て回ることができると考えたからです。
その通行量には、確かに驚かされるものがあり、丸亀市の商店街の実情を
思い浮かべるとき、感嘆ばかりはしていられない思いを抱きました。しかし
ここには、通行量の多さ以上に、このアーケードの下を「人でいっぱいにし
てみせる」という、商店主さんらの熱い意気込みが脈打っている、というこ
とも、説明の中から感じていました。
「あくまで運営は民間が主体、かつ継続できること、これが成功の秘訣」
とは、市役所の説明者の弁。
佐世保市が「YOSAKOI」で成功しているなら、丸亀市には「婆娑羅
まつり」があります。いつの間に、こんなに盛大な催しになったのか、不思
議に思うほど、昨今踊り子連も増え、大きな夏の風物詩となりました。
以前にも別のところで書きましたが、私(内田)はある年の婆娑羅まつりの
夜、たまたま市外からJRで丸亀に帰り着き、駅前の賑わいを眺めながら商
店街を歩いて帰宅しようとしました。
するとその時、アーケードの照明がパッと一斉に消えてしまいました。
私は思わず、自分の時計を見ました。7時20分でした。駅前の賑わいは
まだまだ高まり、このアーケードの中にも聞こえてきています。
これには本当にびっくりしました。どこが問題のネックとなって、こんな
ことになっているのでしょう。
その後、商店街の商店主さんたちと語らう機会もあり、また観音寺の柳町
商店街の取組みを2度にわたって視察もしました。なんとしても、商店街の
当事者の皆さんに再度、商店街再生へひとつのテーブルにまとまっていただ
き、意見を交換し、まとめていただくことが先決だと感じています。
旧丸亀市の市民はもちろん、合併で仲間入りした綾歌、飯山両町の方々に
まで、ここ丸亀の商店街に足を運んでもらうためには、どうすればよいのか。
それは商工会議所をはじめさまざまなお立場の方々が真剣に考えてくださ
っていることとは思いますが、まずは、商店街の顧客である市民からの声を
聴いてみる取組みをされてはいかがかと思っています。
こうしたデータ収集を基として、商店街が市民を応援団としていくことに
成功すれば、限られた市の財政の中からでも、一定の財政支援について、市
民のコンセンサスは得られるだろうと、私は思います。
佐世保市では、ご当局に準備していただいた各種パンフレットのほか、駅
や商店街でも、独自にさまざまなパンフレットやチラシの類を集めてみまし
た。そこに、発行元が「(財)佐世保観光コンベンション協会」とか「(財)佐
世保地域文化事業財団」などの名称が見えます。
何をするにしても財政基盤は必要ですが、それを困難な中からどのように
確保するかについても、これからは知恵をしぼっていかなければならないこ
とは言うまでもありません。こうした財団法人の財政基盤、設立の背景につ
いて、今回の視察では問い合わせることができませんでしたが、これらは調
べればすぐにわかることです。財政的基盤、人的基盤の双方で、これらの資
料を基に、私たち丸亀市においてできることは何なのか、これからも検討し
てまいります。
丸亀市では幸いに、旧百十四銀行の由緒ある建物がこのほど、町の駅「秋
寅の館」に続く商店街活性化の第2弾として、整備が始まるという朗報があ
ります。そこには私の念願である「猪熊弦一郎現代美術館」とのコラボレー
ションも組み込まれると聞き、たいへん希望に胸膨らませております。
しかし一方で、ある商店主さんからは、「そんなに商店街全体のコンセンサ
スを持って進んでいるのではない」という意味の言葉もお聞きしました。
われわれ議会人としてお手伝いできることは何なのか、それを尋ねて、飛
び込んでみたい衝動にもかられます。
佐世保市は今、ご当地ブランドとして「佐世保バーガー」が売り出し中。
私もホテルを抜け出して、その「逸品」を買い求め、深夜のホテルの一室で
賞味してみました。翌朝、駅の観光コーナーでは、漫画家やなせたかしさん
による佐世保バーガーイメージキャラクターも売出し中で、さまざまなグッ
ズ、イメージソングのCDまでもが販売されていました。今も、私の携帯電
話には、かわいらしいバーガーの人形ストラップが揺れています。
この出張復命書は議会議長に提出したあと私のHPにも掲載させていただ
きますが、こうして出張させてもらった内容が、商店街店主さんを始め多く
の方々の目に触れることとなり、少しでも商店街活性化のお役に立てればと